ヒト正常肝臓、疾患肝臓での免疫応答制御機構解明
肝臓は門脈を介して常に腸管由来の物質に暴露されています。免疫システムは肝臓内で様々な病原体に対する免疫応答を活性化させる一方で、免疫応答を起こすべきでない物質、例えば消化管内常在菌由来物質や栄養素など、に対しては免疫応答を抑制しています。肝臓は一般的には他の臓器に比べて免疫応答抑制の強い(免疫寛容な)臓器とされており、肝移植後に免疫抑制剤から離脱できる症例も少なからず見られます。しかしヒト肝臓局所で免疫応答がどのように制御されているのかほとんど知られていません。肝疾患での免疫研究に血液検体が多用されてきた経緯も関係していると考えられます。本研究では、肝胆膵移植外科、消化器内科、病理部門などと連携し、ヒト正常肝臓検体、疾患肝臓検体を用いた基礎的、臨床的免疫研究を展開します。具体的には、①慢性B型肝炎ウィルス感染症でなぜHBs抗体が産生されないのか、その免疫寛容メカニズムの解明、②免疫抑制機構の強い肝臓でなぜ原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎などの自己免疫疾患が生じるのか、を解明したいと考えています。他には先天性胆道閉鎖症など従来免疫のあまり関与していないと考えられている疾患でどのように免疫機構が関与するか等も研究しています。